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■廣瀬隆夫（ひろせたかお）2017年3月5日 1955 年、横浜市金沢区生まれ。小学生の頃から時計の分解や理科の実験が大好きだった。大学では電子工学を専攻。近くの秋葉原に通っては部品を買い真空管を 使ったオーディオアンプの自作に熱中した。どうにか卒論を書き上げて研究室の教授の紹介で1977年に通信機メーカーに就職。NECがインテルの 8080というCPUを使ったトレーニングキットTK-80を出した頃だった。就職して最初に作った製品はテキサスインスツルメント社の4ビットCPUを 使ったオーディオ用のマイコンタイマー。4ビットCPUを使った日本で最初の家電製品と言われている。1985年にNTTの前身の電電公社が、電話回線を通信でも使えるように開放した。それまでは、通信をするためには、電話回線とは別に通信用回線を引く必 要があった。これを契機に新しい仕事が次々と舞い込んで来るようになった。レストランの食材の注文が自動で出来る受発注端末、自動で勤怠データを収集出来 るタイムレコーダー、ワンタッチで電話やパソコン通信ができる多機能 電話などを開発した。 設計図は手書き、コピーは青焼き、半田付けで試作品を作り、プリント基板は手張りし、プログラムは機械語・アセンブラ、というゼロからモノを作る貴重な経 験をした。開発途中で特許をいくつか取得した。その時に目に負担をかけすぎて急速に視力を落とした。将来の電話は携帯できるようになるという話がチラホラ 聞こえてきていた頃で会社では、弁当箱くらいの大きさの携帯電話の試作品を作っていた。 1986年、その頃流行っていたパソコン通信の日経MIXやCompuServe、パソコン雑誌のbit誌やByte誌を通してアメリカの若者の間で面白 いことが起こっていることを知った。その時、スティーブ・ジョブズとマッキントッシュ（Mac）に出逢った。Macという小さなパソコンで世界を変えてい こう、という彼の主張は荒唐無稽であったが、惹かれるものがあった。テキストだけのMS-DOSを搭載したPCに限界を感じていたので、美しいフォントや グラフィクス、サウンドが扱える Macに魅了された。これからは、MacのようなグラフィカルなPCの時代が来ると確信した。 雑誌に記事を書くから多機能電話の説明をして欲しいとパソコン通信で知り合った記者に呼ばれた。電話回線を使ってワンタッチで計算センターに接続するとい うデモを行った。デモが終わって応接室に通されると日本には数台しかないMacが電話機の代わりに置いてあった。それにモデムを繋いでマウスで指示を与え るとアメリカのサーバに自動でつながった。そこから曲をダウンロードするとMacからディズニーのファンタジアの音楽が流れてきた。パソコンでこんなこと ができるのかと興奮した。しかも自分が作った多機能電話と同じことがこんな小さなパソコンで簡単にできてしまうことに驚いた。ハードウエアをゼロから作っ ていく時代は終わったのではないかと思った。 その時ジョブズはすでに会社から追放されていて、Appleは倒産寸前であった。Appleなんていう潰れそうな会社に関わるなと上司には反対されたが、 新しい会社からの誘いもあり、自分の直感を信じて辞表を提出した。退職金を叩いて秋葉原のパソコンショップで初代Macを買った。初めて現金で大きな買い 物をしたときは手が震えた。ハードからソフトの世界に足を踏み入れた。 新しい会社では、大型計算機とコボルがメインで、パソコンはオモチャ扱いされていた。パソコンで使える電子メールを社内に普及させよう、という今では信じ られない草の根運動が起こっていた。1990年に入ってWWWやFirefoxの前身のMosaicというブラウザが出てきてインターネットが熱狂的な ブームとなった。写真や動画が扱えるようになりインターネットが華やかになった。 その後、Appleが日本のビジネス分野に参入するということで会社に声がかかり、Macの代理店になった。ビジネスで使おうとするとMacだけでは力不 足だったので、ソニーのNEWSというミニコンピュータをサーバにMacをフロントエンドにするというシステムを販売した。印刷業界が写植からパソコンを 使ったDTP（デスクトップ・パブリッシング）に移り変わる時で印刷会社に、このシステムがよく売れた。ちょうど、ダウンサイジング(技術の進歩でコン ピュータが小さくなること)、オープンシステム(いろいろな会社のコンピュータをつなげたシステム)がブームになっていた頃だった。 会社がAppleのディーラー会に入っていたので、その関係でボストンやサンフランシスコで開催されていたMacWorldなどの展示会の見学や、クパ チーノのApple本社でのミーティングへの参加などで何度か渡米する機会があった。アメリカのスケールの大きさ、西海岸の人たちのバイタリティとシリコ ンバレーの技術力の高さに度肝を抜かれた。その頃、電気通信主任技術者の資格をとりUNIXをベースにしたネットワーク構築を手がけた。 2000年に、中央官庁のホームページが次々に改ざんされるという事件が起きた。情報セキュリティを強化するために警察関係の人たちと立ち上げたハイテク 犯罪を調査分析する団体の事務局を担当することになった。そこでインターネットには華々しい面だけでなく影の部分があることを知った。これをきっかけに情 報セキュリティに興味をもち、この分野で仕事をするようになった。 その後、Web2.0のブームがあって簡単に情報発信ができるTwitterやFacebookのサービスが出てきた。インターネットが大きく変わろうと していた。ユーザのニーズはシステム導入からサービスの利用に移ろうとしていた。そこではコンサルティングが重要になるということで新しくコンサル会社を 作るという話が出てきた。突然、新会社への出向を命じられた。 出向先ではロジカルシンキング、問題解決、仮説検証などのコンサルティングの基礎をゼロから学ぶことになった。コンサルで大事なことは、頭を柔らかくして 自由な考え方をすること、人の話をよく聞いて理解すること、真の課題を追求すること、などを学んだ。この考え方は、その後の仕事に大いに役に立った。 1980年代、近くを流れる侍従川は汚染がひどくて悪臭を放っていた。その川を、昔のように子どもたちが遊べるところにしようという「ふるさと侍従川に親しむ会」に入会しホームページで広報活動を開始した。今では、ホタルや鮎、カワセミが棲むきれいな川に戻った。 その後、子どもの付き添いで「おもしろ科学たんけん工房」という理科好きの子どもたちを育てようという教室に行ったら、講師のボランティアの人たちと意気投合して、この活動にも参加することになった。ミイラ取りがミイラになるとはこのことだ。 1999年に親父が亡くなり、菩提寺の浄土真宗・長生寺の檀家総代を引き継いだ。入ってみたら、九十六歳を頂点に八十歳以上の長老ばかり。新参者は末席に 座らされるという昔のしきたりがそのまま生き残っている江戸時代の門徒講そのものだった。コンピュータの会社とは全く違った世界は、かえって新鮮に映っ た。こんな中でも新しいことをやっていこうと住職と相談して開かれたお寺を目指してホームページを立ち上げた。 3人の子どもたちは、現在、大学（長女）、高校（次女）、中学（長男）の青春真っ盛り。三人三様だが、朝、なかなか起きれないなど、苦労している姿は、昔の自分を見ているようでおもしろい。でも、子どもたちが試行錯誤しながらも頑張っている姿は大いに励みになっている。 子どもたちが母校に入ることになったので、蘭友会（大道中学）と記恩ヶ丘の会（横須賀高校）の同窓会の仕事を始めた。この仕事をやってみて、同窓会は過去を懐か しむだけでなく、新しい人間関係を広げるきっかけになるという前向きな場なんだということに気がついた。同窓会を通して先輩や後輩の友人が増えた。 2010年にプライベートでFacebookを始めた。社長のザッカーバーグの伝記映画を見てインターネットの本来の精神に戻ろうという彼のまじめな考え 方に共感した。顔を見ながら実名で腹を割った話ができるところも気に入った。従来のホームページに比べて写真やテキストの投稿が楽なのにも感動した。そこ でもたくさんの友だちに出会えた。 SNS（エスエヌエス：ソーシャル・ネットワーク・サービス）は今後も益々重要になるだろうし、やっていて楽しい。備忘録やライフログとしても活用したい。還暦を過ぎても新しいことに挑戦したいし、そのことを、ここで皆んなに発信していこうと思っている。 座右の銘は、今はできなくても、いつかは実らせたいと思う卵を、いつでも３つか４つ胸に抱いて、夢をもって生きると良い。努力は決して人を裏切らない、と いうノーベル賞を受賞した高校の先輩の小柴さんの言葉。どんな雨の日でも雲の上はいつでも快晴だ、という楽観も持ち続けたい。 当面の目標は、世の中の変換点になるであろう2020年の東京オリンピックを見ること。1964年の東京オリンピックが高度成長のきっかけになってモノが豊かになったが、今度のオリンピックは人のココロを豊かにするための何かのトリガーになって欲しいと思っている。 その次には2045年の人工知能が人間の能力を超えるというシンギュラリティ（Singularity）の世界を見てみたい。鉄腕アトムのようなロボットと人間がどのように共存していくかを想像するとワクワクする。 世の中は、これからも、どんどん面白くなっていく。それを見るために、”ぐっすり眠って 旨いものを食べて 健康のために働く”をモットーに歩んでいきたい。 還暦の節目に、今までを振り返ってみようと自己紹介を書いていましたら自伝のようなものになってしまいました。最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。 ●好きな言葉 ねえ君、不思議だと思いませんか？（寺田寅彦） 【私のパソコン遍歴】 1977：TK-80 1985：初代Macintosh（DynaMac） 1989：MacIIci 1994：PowerMac8100 1998：DELTANAUT 3450 2005：Macmini（PowerPC） 2008：Dell Vostro 1510 2009：iPhone 3GS 2013：iMac 2013：iPhone 5S 2014：Nexsus 7 2015：iPad air2 2016：MacBook Air ●関連サイト |
