■パソコンに文句を言おう

前は、気軽に文書を書くのには書院や文豪というワープロ専用機があった。プリンタと一体化して電源を入れればすぐに使える便利なものだった。今、60、70歳になっている人は、40、50歳の時にこのようなワープロ専用機に親しんでいた人が多い。今でも使いつづけている人もいる。この機械が壊れたら買い替えが出来ないと大事に使っている人もいる。

いつの頃からか、パソコンが普及を始めて、そこにワープロソフトを載せればワープロ専用機と同じ機能を持つようになった。販売店は、パソコンを売りたいものだから、パソコンを買えば家計簿の計算もお絵描きもできて、もちろん、ワープロも出来るというお買い得感を煽って売りつけた。しかし、実際にパソコンで家計簿を付けている人が何人いるだろうか。ほとんどの人がやはりワープロ機能しか使っていないのではないのか。それなら、ワープロに特化した専用機のほうが余ほど使い勝手が良い。

また、操作性についてMS-DOSの時代はベンダに文句を言えた。しかし、Macintoshのインターフェースを模倣したWindows95が出始めてから、ビジネスの分野でマイクロソフトが世界的に覇権を握った。パソコンはグローバルスタンダードでなければならないという考え方が一般的になった。そして、使いもしない不要なソフトが一杯詰まった使いにくい、しかも高価なパソコンが巷にあふれた。

パソコンが使えないのは、使う人に知識がないからというベンダー主導の考え方が主流になった。パソコン教室に通ってパソコンを勉強してくださいという。パソコン検定なんていうのを作って金を払って使い方を勉強に行く。パソコン教室は大繁盛だ。パソコンがウイルスに感染するのは、使う人が注意を怠っているからなのでワクチンソフトを入れてくださいという。テレビの使い方を習う人がいるか。テレビが突然切れたらそれは不良品ではないのか。

技術は人の幸福に向かっていかなければ、進歩した意味が無い。今のパソコンは、新しいバージョンが出てくるにしたがって複雑で使いにくいものになっている。バージョンが変わると使い方が全く変わってしまう。ウイルスは、ますます増えて、セキュリティベンダーは大儲けだ。ウイルスが出てくる原因は、システムにバグがあるからだ。そのバグをついてウイルスが蔓延する。検査が完全に終わっていない半製品を市場に出して、不具合が出てきたら、ウイルス対策という名目でユーザに修復をたのんでいる。

パソコンの世界は少しおかしくなっている。パソコンも電気製品の一つである。もっとユーザが文句を言っても良いのでないだろうか。そのためには、Windowsという1種類のOSに独占させるのでなく、LinuxやMacOSも頑張って欲しい。